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石井弓・東北大東北アジア研究センター准教授=2024年9月20日、仙台市、後藤遼太撮影

 戦場での加害行為で心を壊し、戦後も多くの旧日本軍兵士たちを苦しめ続ける。近年、その家族たちが声を上げ、明らかになってきた「戦争トラウマ」の一端です。

 では、被害を受けた海外の人たちのトラウマは? 中国で20年以上フィールドワークをしてきた東北大学東北アジア研究センターの石井弓准教授(中国近現代史)に聞きました。

16歳の夢をいまも見る

 ――中国での聞き取り調査で、不思議な発見があったそうですね。

 農村で数百人にインタビューする中で、「夢過日軍(日本軍の夢を見た)」という言葉を何度も耳にしました。「あれ、違う人からも聞いたぞ」と気づき、通訳に話したら、「私も見るよ」と言われて驚きました。

 ――どんな夢ですか。

 日本兵に追われて逃げる夢を、大勢が戦後何十年も見続けていました。

 フィールドワークをしてきた山西省の農村地帯は日中戦争の最前線で、日本軍による「惨案(虐殺事件)」が多発した地域です。調査対象の4割は戦争経験者でした。

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山西省・沁水に入城する日本軍兵士=1940年

 1928年生まれの女性は、16歳の時の記憶を頻繁に夢で見ていました。

 「皆逃げて、日本軍が村人を殴って、ピュンピュン音を立てて鉄砲の弾が飛んでくる。殴って、銃で撃って、恐ろしい」

 纏足(てんそく)のため「走るのが大変だった」。そんな細部まで鮮明で、恐怖で目が覚めるそうです。

日本で注目されつつある「戦争トラウマ」。その状況を中国の人は複雑な思いで見ています。研究者に向けられた言葉とは。

日中戦争の最前線で起きた惨劇

 ――「惨案」とは?

 現地で有名なのが「趙家荘惨…

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